【探偵調査員の奮闘日記】探偵が露出狂を調査したらふつうにダメだった話

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探偵小説

こんにちは、うな探偵社です。
一般的に不貞行為とは、婚姻関係にあるパートナーがいながらもその他の異性と肉体関係を持つことをいいます。
しかし肉体関係の有無を第三者が目視で確認することはほぼ不可能なため、不貞調査では
「ラブホテル(=肉体関係を持つための場所)に2人きりで入った」
「相手の家やビジネスホテルなど、同じ部屋で1晩を過ごした」
といった決定的な状況証拠を集めることになります。

しかし、これはごくごく稀な、不貞行為が撮れてしまったケースです。

 

経緯はこうです。
対象のM美さんは40代前半の主婦で、依頼者は旦那様。


昔からM美さんは性に奔放な方だったそうですが、妻として母としても申し分なく、半ば自由にしていたそうです。
しかし最近、ある事件がありました。

旦那様「ただいま」
ご友人「お邪魔しましたー」

ある日、旦那様が自宅に帰ると、息子(高校生)のご友人がすれ違うように帰っていきました。

そして、それが、翌日や、次の日にも起こります。

旦那様「あの子、最近めちゃくちゃよく来てないか?」
息子「家が近いから一緒に宿題をして帰ってるんだ」

ほぼ毎日、宿題をしに寄っては、夕飯前に帰るようです。

金曜日
「ただいま」
「あ、じゃあそろそろ。お邪魔しましたー」

高校生の息子さんのお友達が頻繁に家に遊びにくるようになってしばらく経ったある日、旦那様が自宅に帰ると、
その日、リビングに息子はおらず、いたのはM美さんとそのお友達だけでした。

その日もそのお友達はすぐに帰ったそうですが、旦那様はなにか、違和感を覚えたそうです。

(車や玄関の音で、私が帰ってきたことは部屋に入る1分くらい前にはわかる。
まさかとは思うが………)

その週末の深夜、旦那様はリビングの一角にカメラを設置しました。家族で食事をするテーブルと、玄関に続く扉が映るだけの小さなカメラです。

そして次の月曜日、息子のお友達が遊びにきていたことを確認し、また深夜にこっそりと回収。
誰にも見つからないよう、車の中で再生したそうです。

息子とそのお友達は学校の終わったあと、16時頃に自宅に入り、リビングを通って2階の部屋に上がります。
そのまましばらくは降りてきません。
そして18時半頃、友達は1人で荷物を持って降りてきます。

2階からおりてきたご友人は、そのまま帰るのかと思いましたが、なんと、リビングで本を読んでいたM美さんに後ろから抱きつきます。
M美さんは笑いながらあやしているようで、嫌がってはいません。

2人は両手を繋いでしばらく談笑していましたが、車の音が聞こえると手を離し、ご友人は荷物を持って立ち上がり、入ってきた旦那様と入れ違いにして出て行きます。

カメラの映像を見終えた旦那様は車の中で頭を抱えました。

(昔から危なっかしいところはあったが…
高校生の息子の友人と手を繋いだり抱き合ったり、信じられない。
放っておけばもっと酷くなる可能性もある。
これ以上子どもたちの近くには置いておけない)

そうして奥様との離婚を決意した旦那様は、子どもたちの親権を取るために、M美さんの浮気調査を依頼するに至ったそうでした。

旦那様「調査は来週末に。元々妻は週末にはよく出かけていきますが、その日は長男も次男も合宿、私も出張で留守にします。必ずなにか起こるのではないかと思います」

旦那様にはなにもはっきりとは言いませんでしたが、確信があるようでした。

週末の金曜日から、調査が始まりました。
お子様2人は部活や習い事の合宿だそうで、夕方には既におらず、旦那様も出張とのことでスーツケースを引きずって出て行きます。

M美さんが出てきたのは、土曜日の昼でした。

M美さんは旦那様と同じ40代前半とのことでしたが、
出てきたのはとてもお子様が2人いるとは思えない、
タイトなミニスカートの艶っぽい女性でした。

客観的に見ると郊外の閑静な住宅街には似つかわしくない奥様でしたが、
M美さんは電車で数駅離れた小さな繁華街に移動し、とあるバーに入ります。

待ち合わせかと調査員も中で待機します。

M美さんは1人でお酒を注文して飲み始めましたが、1杯目をのみ終わるよりも早く、同じカウンターで飲んでいた男性が席を移動して話しかけてきたようでした。

どう見ても待ち合わせというよりはナンパだったのですが、意気投合したのか、30分くらいで2人は精算を済ませ、バーを出て行きます。
調査員は慌てて後を追いました。

バーでナンパしてきたと思われる男性と店を出たM美さんは、やはり、そのままホテルに直行でした。
一泊2日で家族が全員家を空けるから、きっとなにかあるはず…と旦那様は言っていましたが、その読み通り、確かに信用されないのも無理はないスピードです。

まだ昼の12時…。
炎天下のラブホテルの駐車場で、張り込みが始まりました。

M美さんと男性は、17時前に出てきました。
ホテル前でそのまま手を振り合って別れると、M美さんは歩いて元のバーに戻ります。

またナンパ待ちでもするのかと思っていたら、とある男性と親しげに挨拶をして隣に座ります。

男性
「昼間もきてたの?」
M美
「うん。1人だけ」

2人は1時間程滞在するとそこを出て、イタリアンバルに移動します。
お酒を飲みながら食事をするようです。

さらに3時間後、2人はかなり泥酔した様子で出てきました。
路地に入ってはキスをしたり、お互いの身体を触ったりしているようで、M美さんは服に手をかけて脱ごうとしていますが、男性がそれを抑えているようです。

2人はそんな感じでかなり時間をかけながら進み、フラフラでホテルに転がり込みます。

23時頃、2人は大声で笑いながら楽しそうにホテルから出てきました。

そのまま楽しそうな様子で駅に入り、どうやら男性はM美さんが電車に乗るのを見届けているようです。
「ちゃんと真っ直ぐ帰るんだよ」と何度も声をかけています。

やがて時間がきて、M美さんのみが乗車した電車が発進します。
私たち調査班は二手に別れて、それぞれを尾行します。
私は継続してM美さんの後を追いました。

M美さんの自宅までは数駅あるのですが、M美さんは何故か1駅で電車を降りました。
気分でも悪くなったのか?と思いましたが、迷いのない足取りでホームを移動すると、反対方面の電車に乗ります。
忘れものでもしたのでしょうか。

やはりM美さんは元の駅で降りると、歩き出しました。
しかし駅のアナウンスによると、今ので終電が終わってしまったようです。大丈夫なのでしょうか。

M美さんは駅からかなり歩き、繁華街の外れのほうにくると、古いビルに入っていきました。

調査員「嘘だろ。ここ、昨日もきたぞ……」

調査を毎日していると、全然別の対象者がたまたま同じ場所に行ったり、奇跡的に調査同士が鉢合わせたりします。
この日、私はたまたま、前日と同じ場所にたどり着いたのでした。

M美さんがわざわざ終電を逃してまで、一旦帰るふりをしてまで戻ってきて、入ったのはハプニングバーでした。
調査員である私は奇遇にも前日の調査で同じ場所にきていたので、そこがどういう場所かわかった上で、M美さんに続いて中に入ります。

M美さんも恐らく初めてではないような様子で、入るとすぐに、男性に声をかけられていました。
まだかなり酔っているようです。

しばらく見ていると、M美さんはお酒を2杯飲んだあと、
1人で男性を6人連れて他の部屋に移動していきました。
あまりに見ていると場所柄、店員等に警戒されてしまう可能性もあるので、ここからは店の外に出て出入口をマークすることにします。

約2時間後、M美さんは出てきました。
中でまた飲んできたのか、千鳥足という様子で出てくると、
路地を2本くらい歩いたところで路上に座り出します。

外れのほうとはいえ深夜の繁華街。
M美さんは20代にも見えるくらい若く綺麗な方で、そんな方がミニスカートで足を投げだして地面に座っているのですから、声をかけてくる男性もいます。

本当は調査対象者と接触するなんてご法度ですが、さすがに危なっかしくて見てられません。
もしもどこかへ連れて行こうとする人がいたらすぐにでも走って行こうと、私はかなり近めの距離でスタンバイしていました。

かなり酔いがまわっているのか、M美さんはハプニングバーを出て少し歩いたところの路上で座り込んでしまっています。

そのまま寝てしまうのかと心配していた頃、おもむろに立ち上がり、さらに路地を深く入って全然人のいない公園に入ります。

あまりに静かなため、近づきすぎると尾行していることがバレる恐れがあります。
さっきの路地も危なかったですが、こんなに人気のないところに1人でいるのもそれはそれで危険な気が……

M美さんはベンチに寝転ぶと、電話をしていふようでした。
離れたところにいるので会話の内容まではわかりませんが、
たまに大きな笑い声が混ざります。

電話が切れるとまた公園は静かになりましたが、
M美さんはベンチの上に立って着ていた服を脱ぎ出しました。

私は探偵なのでそれを隠れて気づかれないように写真を撮るのが仕事なのですが、どこからどう見ても犯罪者は私です。

というか、このお母さん、やばすぎる。

M美さんは下着姿でベンチで寝ています。

すると、どこからか足音が近づいてきました。

さすがに今男性が通りかかるとまずいので、職務を放棄して飛び出そうかと思いましたが、気づけばそれは先程見た男性でした。

男性とM美さんは笑いながら話しています。
男性は帰り際、まっすぐ帰るよう何度も言いながらM美さんが電車に乗るところまで見届けていたので、
それでもUターンして戻ってきてまでここで酔い潰れているM美さんに呆れ返っているのかもしれません。

男性はM美さんの服を手に持ち、しばらくは着せようと戦っていましたが、最終的には諦めたようで立って眺めているだけになりました。

やがてM美さんは疲れたのか段々と大人しくなっていき、
男性はM美さんに服を着せてホテルに連れていきました。
不貞というより保護といった感じですが、今調査3度目のラブホテルです。

再び2人が姿を現したのは、それから10時間近く時間が経ったお昼過ぎでした。
男性は今度こそ別れを告げて帰っていきます。

依頼者である旦那様の申し出により、土曜日の夜も調査になりました。
40代で朝帰り、私なら体力的に厳しいので家でゆっくりしたいな…と思うところですが、

M美さんは夕方に出てきました。
華奢なワンピースを着ており、今日も男と会うのだろうか、とそれでわかります。

例の如く同じバーに出向いたM美さんは、そこでどうやら若い男性と仲良くなったようでした。
高校生の息子と同じくらい、とまでは言いませんが、かなり歳が近いのではないかと思うくらい幼い顔立ちの男性です。

2人はあっという間に意気投合し、M美さんはその若い男性に手を引かれホテルへと入っていきました。
本当、元気なお母さんです。

夜22時頃になってホテルから出てくると、もう想定内でしたが、M美さんは1人でバーに戻ります。
そして、もちろん、また別の男性とお近づきになるのです。

M美さんが再びホテルを出てきたのは、終電も終わった深夜1時頃でした。
今日は昨日ほど酷い酔い方をしているわけではなさそうでしたが、かなり呂律の回らないような感じで電話をかけ始めます。

「帰れない」「迎えにきて」「ここがどこかもわからない」
「公園」
という言葉が聞こえます。

M美さんは昨日の公園で待ち、やがて昨日の男性がまた同じように現れました。
自宅が徒歩圏内とはいえ、非常識な時間に連日呼び出されても来てくれるとは、かなり仲がいいようです。

M美さんはベンチの上に立ち、ストリップを始めました。
夜中の公園は静かなので、2人の声を押し殺して笑う声が聞こえます。

M美さんは着ていたものをすっかり全部脱いでしまい、しばらく2人はいちゃついて遊んでいたようですが、そのうち2人が重なり合うのが見えました。

撮っていいのか???と頭がいっぱいになります。
探偵をしていても、ここまでのシチュエーションに出くわすことはまずありません。

けれど探偵はただ事実を依頼者に伝えるだけです。
静かに2人のいる辺りを写真に収め、M美さんが帰る気になるのを待ちました。

2人は明るくなるまで公園で過ごし、始発で帰りました。
2晩に渡る長い調査もこれで終了し、依頼者も出張から帰京します。
数日で報告書を仕上げ、会うことになりました。

探偵「〜〜という感じで、朝6時頃に帰宅して終了しました」
依頼者「なるほど……はあ……」

依頼者の旦那様は渡された報告書を封筒から出すこともなく、紙袋にしまいました。
概要は口頭でお話したのですが、先程からため息が止まりません。

依頼者「来週末には弁護士と会って、離婚する方向で進めていきます。調査、ありがとうございました」

探偵としての調査はここで役目を果たした形ですが、
多くの場合、この後の展開についてのご相談や、報告という形で連絡を取り合う関係性は続きます。

M美さんの旦那様の場合、別居して裁判が始まるというところまで進んだあたりから連絡が途切れ、1年ほど経ったある日、電話がかかってきました。
裁判がもうすぐ終わる、という報告でした。

探偵「そうなんですね…。たしか、親権について争っていましたよね」

旦那様「はい。長くなってしまい子供たちにも迷惑をかけましたが、2人とも私と暮らせることになりました。というのも、M美が熟女系のアダルトビデオに出演しているようでして……」

旦那様がご自身で撮ったリビングでの映像、不貞調査の報告書、現在の職業などが重なり、ようやく裁判は決着がついたそうです。
実際に調査をした身としては、M美さんには現在のご職業は天職なのではないかと思います。
私がそのビデオを観たかどうかについては、今ここでお話することはできませんが。

 

                    おわり

~実話~

一口に調査といっても、本当に全部パターンが違います。

                    調査員K

Supervisor Information

監修者情報 | 金子 玄

慶福法律事務所代表

【出身大学】
慶應義塾大学法学部法律学科・大学院法学研究科修士課程を修了

【経歴】
平成19年 弁護士登録後、複数の都内法律事務所に勤務
平成25年 慶福法律事務所設立

【所有資格】
弁護士(識別番号36627_第一東京弁護士会)・図書館司書資格

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