ネットのスカッと話を参考に不倫の復讐を考えている方へ

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不倫調査

旦那の不倫が発覚した際、妻である自分を裏切った旦那や、不倫相手に復讐がしたいと考える人も多いと思います。
「不倫」「復讐」で検索すると、大量にヒットする不倫の復讐譚。その中でも特に目を惹くのは、YouTubeやSNSで分かりやすくまとめられている「スカッと話」です。
不倫に浮かれて調子に乗っている旦那や不倫相手を追い詰め、築き上げた全てを奪って破滅させる「スカッと話」に、あなたは自己投影して「自分もこんな風にあいつらに復讐できたら」なんて思うかもしれません。

中には実際にスカッと話の手順に乗っ取って、同様の復讐を果たそうとする人もいるでしょう。
でも、「スカッと話」を鵜呑みにして、復讐を実行するのはおすすめできません。
この記事では、そのあたりについて詳しく説明していきます。

1. スカッと話とはなにか?

 

1-1.そもそもスカッと話とは?

「スカッと話」がどんなものか、知らない人の為に簡単に説明しておきましょう。
スカッと話とは、簡単に言えば改善懲悪の話。腹が立つ非常識な人間を懲らしめ、スカッとした爽快感を得ることができる話の通称です。おとぎ話然り、水戸黄門然り、昔から人々に愛される定番の物語スタイルでもあります。
最近では漫画や小説はもちろん、SNSやYouTubeの投稿が話題になったり、テレビで「スカッと話」のエピソードを毎週紹介する番組が放送されたりと、多様な形でスカッと話が配信されるようになってきていて、それに伴いスカッと話を視聴する層はますます拡大しています。
昔から人気があるスタイルではありますが、多様のストレスを抱える現代人には特に需要があったようです。「スカッと話」は、手軽なストレス解消の手段として老若男女問わず広い世代から愛されています。

1-2.スカッと話の種類を簡単に説明

「非常識な人間に対するスカッと」「職場でのスカッと」「義実家へのスカッと」「モラハラ旦那へのスカッと」……などなど。改善懲悪の矛先となる対象も様々で、視聴者はより共感できる対象の話を求めて、無数にあるスカッと話の中から見たい話を選択します。今回はその話の中でも「不倫した旦那と不倫相手へのスカッと話」に焦点を絞って、説明していきましょう。
「不倫した旦那と不倫相手へのスカッと話」では不倫された妻、いわゆる「サレ妻」が、不倫旦那と不倫相手をやりこめ、復讐を果たします。同じような境遇の主人公が爽快な復讐を果たす姿は、視聴したサレ妻に、つかの間辛い現実を忘れさせてくれることでしょう。これ自体は本来の「スカッと話」の正しい利用の仕方なので、何も問題はありません。
けれど、私たちが目にする「スカッと話」は、必ずしもリアルを追及したものだとはかぎりません。「スカッと話」はあくまで視聴者を満足させることを目的にした、エンターテインメントなのです。
それなのに真に受けて、「スカッと話」と同じ方法で旦那や不倫相手に復讐を果たそうとすると、最悪の場合、不倫被害者のはずのあなたが、逆に加害者になり全てを失ってしまう可能性さえあるのです。

2. スカッと話の問題点

 

2-1.倫理を無視した、法に反した復讐が行われている場合がある

スカッと話がエンターテイメントである以上、その中で行われる復讐は、視聴者を興奮させるような過激なものであるほど人気が集中します。実行するかはともかく、心の中では現実ではなかなかできない派手で攻撃的な復讐で、旦那や不倫相手に後悔させたいと思っているサレ妻の願いを、スカッと話が代わりに物語の中で叶えてくれるのです。
DQN返しなんて言葉が一時期ネットで流行しましたが、目には目をの精神で、やり過ぎなくらいに過激な因果応報を求める視聴者は少なくありません。もし法が許すのならば、旦那や不倫相手を殺してやりたいと思っているサレ妻も少なくないでしょうから、当然と言えば当然の傾向です。
暴力的な制裁を加えたり、公衆の面前で不倫の事実を暴露して社会的に抹殺したり、ネットで個人情報を拡散したり……スカッと話の中ではたくさんの過激な復讐が果たされていますし、仮にそれをSNSなどで実体験として語る人がいれば、因果応報を求めるフォロワーからは勇者として称えられることでしょう。過激な復讐を果たしたあなたに憧れるフォロワーから祭り上げられ、あなたはサレ妻界における希望の星にでもなったような気持ちになるかもしれません。
けれどそれはあくまで、復讐の報告を見ているだけの第三者の立場だからこそ言えることです。フォロワーの期待に応えようと復讐をやり過ぎてしまい、法律で罰せられることになったとしても、多くの場合罰せられるのはあなただけ。焚きつけただけのフォロワーが罰せられる可能性は少ないのです。
法律で罰せられてしまえば、慰謝料や罰金などの金銭的な被害を被る可能性もあるでしょうし、最悪の場合実刑判決を受けて、前科を負うことになってしまうかもしれません。そんなあなたを見て手のひら返しのように「犯罪行為をしたんだから自業自得だ」なんて嘲るフォロワーも出て来ることでしょう。
サレ妻の希望の星のつもりで過激な復讐に走った結果、犯罪者になってフォロワーからも見捨てられてしまう……なんて、笑えませんよね。

2-2.フィクションである可能性が高い

「スカッと話」はエンターテイメントである以上、形式的には実話の体を取っている話であっても、現実にあったことかどうかは怪しく、全てが創作である可能性はぬぐい切れません。
現在では「スカッと話」という市場はすっかり確立されていて、そこに商機を見出している業者も少なくはありません。しかし、ちょうどいい実体験ばかり収集しようとしても、常に視聴者の支持を受けるような話ばかり集まるとも限りません。そうなった場合、業者が自分で都合のいい物語を創作する可能性は高いです。また、業者自体は実体験を聞いて回っていたとしても、その業者に自身のスカッと体験を伝えた本人が、メディアで取り上げられたいが為に体験を創作している可能性も大いにあります。
創作ならばどれだけ過激な復讐だって自由に行うことができますし、違法な復讐によって旦那や不倫相手が被害を受けたとしても、復讐者が罰せられることはありません。
中には物語の都合で法律を捻じ曲げて、現実ではありえない結末を創造しているものもあるでしょう。
スカッと話がフィクションで、視聴者に都合のいいあり得ない展開を連発したとしても、ただスカッとしたいだけの視聴者からすれば何も問題はありません。エンターテイメントとしてのスカッと話に重要なのは、それを見た視聴者が楽しめること。現実に即しているかどうかは、それほど重要ではないのです
けれどその話を参考に、実際に復讐を行おうとする場合は話は別です。誰かの想像だけで作られた物語を参考にしたところで、あなたの復讐がうまく行くはずがありません。
失敗してから「スカッと話では上手く言ってたのに!」なんて言っても、もう遅いです。「このスカッと話を見なければ、こんな復讐をしようなんて思わなかったから、全部このスカッと話が悪い」と主張したところで、旦那も不倫相手も警察も、誰も取り合ってくれないでしょう。

3. スカッと話を参考にして、現実で復讐を行ったらどのようなデメリットが生じるか

先にあげた問題点からも、既にスカッと話を鵜呑みにした場合のデメリットは見えているかもしれませんが、もう少し深堀りしてみましょう。
スカッと話を参考にして不倫相手に復讐を目論んだ場合に生じる具体的なデメリットは、二つ考えられます

3-1.不倫を立証する手段が間違っていて、裁判所に不貞行為が認められない可能性がある。

不倫にまつわる「スカッと話」においては、不倫の証拠を突き付けて、慰謝料を請求する流れは必要不可欠な要素です。
不倫で傷つけられた心はお金を請求するくらいでは癒されないかもしれませんが、それでも不倫をした相手の懐が少しも痛まない展開では、視聴者はちっともスカッとできません。視聴者が「不倫のスカッと話」を見てスカッとする為には、慰謝料がきちんと請求できたという流れは最低条件であり、プラスアルファでさらに過激な因果応報が不倫旦那や不倫相手に訪れることが求められているのです。
けれど、この物語の基本ともいえる不倫の証拠を集めて慰謝料を請求する展開が、現実に即していない「スカッと話」は、実は結構多かったりします。
不倫にまつわる「スカッと話」を見ていて、旦那や不倫相手がレストランなんかで密会している所に乗り込んで、現行犯として慰謝料を請求するような展開を見たことはありませんか? 他にもGPSで旦那の車がラブホテルに入っていくところを押さえて、駐車されている車の写真を撮ったものを証拠としている話。手を繋いでデートしていたり、いちゃいちゃキスをしている写真が不倫の証拠となっている話なんかを、見たことがある人も結構いると思います。
実は上記のこれらは、全て確実な不倫の証拠としては、認められていないのです。これらの話を鵜呑みにして、「あのスカッと話と同じ証拠を手に入れたんだから、余裕で慰謝料を勝ち取れる」なんて勘違いしてたら、ひどい目に遭います。
法律上の不倫、すなわち「不貞行為」とは、あくまで「肉体関係」を前提としたものです。「肉体関係をもったこと」を証明できる証拠でなければ、慰謝料を勝ち取ることはできません。
たとえ旦那と不倫相手が恋人関係にあったとしても、ただ一緒に食事をしたり、手を繋いだり、キスをしているくらいでは「不貞行為」とは認められません。肉体関係がないプラトニックな浮気は、「不貞行為」とはみなされないのです。
ラブホテルに出入りする場面の写真は「不貞行為」の証明になりますが、車がホテルに駐車されている写真だけでは「車を第三者に貸していた」と主張される可能性もある為、決定的な証拠にはならなかったりします。
また出入りしていたのが性行為を目的としているラブホテルではなく、シティホテルだったりした場合も、それだけでは「不貞行為」の証拠にならなかったりします。ラブホテルであったとしても「性行為を行うだけの十分な滞在時間があったのか」などの情報も重要である為、実際は出入り両方の場面の写真が必要だったりと、不貞行為の確実な証明になる証拠の条件は厳しいです。
本人の自白の音声や、性的なLINEのやり取りなども、「脅されて無理やり自白させられた」「LINEのやり取りだけ、ふざけて恋人同士のようにふるまっていた」なんて、言い逃れされてしまうことがあります。
また、一度だけの性行為では慰謝料を請求できない場合もある為、たとえ性行為の現場に直接突入して現行犯で決定的な現場を押さえたような場合でも、現実では慰謝料を勝ち取れない可能性さえあるのです。
もし「スカッと話」が創作の場合。作者の下調べ不足からか、絵の都合か(YouTubeのように性的なものの制限に厳しくて、直接的な表現ができない媒体もあります)証拠が不十分であっても慰謝料を勝ち取れている展開になっていることもしばしばあります。ですが実際に不貞行為を確実に証明できるだけの決定的な証拠がなくても、旦那や不倫相手が不倫を認めて示談に応じれば慰謝料は受け取ることができるので、完全に嘘とも言い切れないのが難しい所です。
旦那や不倫相手が法律に明るくなく、ネットで慰謝料について調べる知恵もなく、弁護士を雇う意欲やお金がなかった場合、中途半端な証拠でも慰謝料をごり押しできるかもしれません。
でも当然そんな簡単な相手ばかりではありません。きちんとした知識がある弁護士を雇われて入れ知恵されれば、不倫の事実を上手く誤魔化されて、うやむやのまま逃げられてしまうかもしれません。
不倫の慰謝料について下調べをしないままに「スカッと話」をそのまま鵜呑みにすると、決定的な不倫の証拠を逃してしまって、あなたが本来受け取れるはずの慰謝料が受け取れなくなってしまうかもしれないのです。

3-2.過剰な制裁の結果、逆に旦那や不倫相手から訴えられる可能性がある。

先にも記述しましたが、「スカッと話」は復讐の手段がやり過ぎなくらい過剰であればあるほど、視聴者から喜ばれる傾向にあります。しかし、それはあくまでエンターテイメントとしての話。実際に過剰な制裁を行った場合、法律で罰せられてしまう可能性が出てきてしまいます。
旦那や不倫相手に暴行をふるったりするのは当然ですが、ただ水をかけただけでも、被害者が訴えれば暴行罪に問われる可能性はあります。
社会的に抹殺しようと不倫の事実を拡散するのは「スカッと話」における常套手段ですが、実はこれも名誉棄損で訴えられる可能性があります。残念ながら事実であっても、被害者の社会的評価を下げる可能性がある事柄を公の場で広めれば、名誉棄損は成立するのです。
ただ内容証明を職場に送り付けただけでも、名誉棄損で訴えられたケースも。個人的には不倫をした相手に社会的制裁を与えるのは当然の権利のように思うのですが、残念ながら法律はそれを許してくれません。
「たとえ自分の人生が滅茶苦茶になったとしても、旦那や不倫相手に制裁を加えないと気が済まない」という方もいるかもしれません。そういう方が、デメリットも全て把握したうえで「スカッと話」を真似して制裁を行うなら、それはそれでいいでしょう。自分の手で過剰な制裁を与えることでしか、解消できない苦しみもあります。ただそのデメリットだけは、復讐を果たす前にきちんと理解しておくべきです。
もしあなたが過剰な制裁の結果、慰謝料を払うことになったら、相手側の経済的負担は軽減してしまいます。もし相手がお金の負担を一番の制裁と思うようなタイプなら、「ラッキー」と内心ほくそ笑んでいるかもしれません。
もし前科がついて、あなたが行ったことが周囲に広まれば、当然あなたにも社会的な制裁は加えられます。そんなあなたを不倫をした旦那や不倫相手が「ざまぁ」と嘲笑うかもしれません。
過剰制裁を行って犯罪者になってしまえば、元々は被害者だったあなたは、旦那や不倫相手同様に加害者になってしまいます。罪を犯したものに、全て因果応報があるのなら、残念ながらあなたにも因果は返ってきてしまいます。その結果、あなたの未来がめちゃくちゃになってしまうかもしれません。
復讐で得た一時の満足感は、果たしてそれだけの価値があるものなのか。復讐に手を染める前に、あなたは考える必要があるのです。

4. 不倫の制裁は合法的なものを。

法律に反することがない正攻法の制裁は、不倫の事実を立証して慰謝料を請求することです。「スカッと話」においてはあくまで最低条件でしかない復讐法でありますが、結局それが一番あなたの未来を傷つけないで済みます。
あなたの人生は「スカッと話」のように、復讐をメインとした短い物語ではありません。大事なのはいかに復讐するかではなく、いかに復讐後の生活を良いものにできるかです。物事は長期的な視点で考えましょう。
前述の通り旦那と不倫相手が肉体関係にあった証拠は、非常に限定的で入手が難しいので、情報収集の際は探偵を頼りましょう。不倫相手の素性がわからなければ慰謝料は請求できないので、その場合は素性調査も一緒にお願いした方がいいです。探偵は調査のプロフェッショナルなので、ターゲットに気づかれないように、慰謝料を請求できるだけの証拠をや、不倫相手の情報を集めてくれるはずです。
あなたが多少なりとも「スカッと」する為には、確実に旦那と不倫相手の双方から慰謝料を勝ち取りたいところです。証拠をしっかり確立できなければ、慰謝料を請求して旦那や不倫相手に経済的な打撃を与えることができなくなりますので、調査費用を惜しんではいけません。不倫して離婚に至った場合の慰謝料は200~300万円と言われていますので、慰謝料さえ回収できれば、十分に探偵費用も賄えるはずです。
証拠が十分に集められたら、できれば弁護士に相談しましょう。そうすれば下手な言い訳で丸め込まれずに済みます。けれど証拠さえ十分であれば、相手がどれだけ優秀な弁護士を雇ったところで勝ち目はないので、弁舌に自信がある人はまずは自分で交渉してみるのも一つの手かもしれません、
あとは請求した慰謝料を存分に利用して、離婚後の幸せな未来を確立してください。
あなたが元旦那や不倫相手より幸福になることこそ、なにより一番「スカッと」する復讐なのですから。

Supervisor Information

監修者情報 | 金子 玄

慶福法律事務所代表

【出身大学】
慶應義塾大学法学部法律学科・大学院法学研究科修士課程を修了

【経歴】
平成19年 弁護士登録後、複数の都内法律事務所に勤務
平成25年 慶福法律事務所設立

【所有資格】
弁護士(識別番号36627_第一東京弁護士会)・図書館司書資格

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